そもそも「きりたんぽ」は、秋田杉の伐採や炭焼きなどで山にこもった作業者や職人などが、残った飯やおこげを練って、トリでダシを取った鍋に入れたのが起源とされています。マタギと呼ばれる狩人が獲物を煮込んだ鍋に、握り飯を入れて食べたのが発端とする説もあります。当地には「味噌付けたんぽ」というものもあり、これは文字どおり味噌を塗った、きりたんぽを食する"別バージョン"といえましょう。 「きりたんぽ」という名称には、どこか滑稽でいて、口ざわりの良い響きがありますね。秋田県人は「きり」を省略して「たんぽ」とだけ呼ぶことが多いです。「たんぽ、喰うべぇ」という具合に。形が槍のタンポ(槍の先についている金属刃の部分を収めている鞘)に似ていることから、その昔、南部の殿様が同じ南部藩である鹿角を訪れた際に、そう呼ぶよう"提案"したのが「たんぽ」の語源、と「鹿角の伝説」に残されております。鹿角を訪れた殿様は、長い串に飯を握りつけて焼いた食べ物を出されたそうで、ことのほか美味だったとのこと。これが史実に即したものであれば、前述のとおり、鹿角がきりたんぽの発祥地ということになります。1本の「たんぽ」を数センチに"切って"鍋に入れることから、「たんぽ」は「きりたんぽ」と呼ばれたのでしょう。 新米が出回り、秋が深まってくると、秋田県内では「たんぽ会」が盛んに開かれます。家族や親戚、友人同士、職場の仲間など「たんぽ会」の顔ぶれはさまざまです。きりたんぽ鍋が秋田を代表する鍋料理の1つであることからすれば、「たんぽ会」という言葉も秋田ならではということになりますね。秋田県人の少なからずは、「たんぽ会」という響きに愛着を持っています。 さて、きりたんぽ鍋の食材ですが、大館の「山田流」や鹿角の「正調」など地域によっていくぶんの違いはあるのですが、基本は、きりたんぽ、比内地鶏、ネギ、セリ、キノコ、ゴボウ、コンニャク、そしてダシ、といったところでしょう。どうしても手に入らなければブロイラーでも仕方がありませんが、きりたんぽ鍋の味を極限まで高めるなら鶏は比内地鶏に限ります。比内地鶏は、名古屋コーチン、薩摩鶏とともに日本3大美味鶏の一角に名を連ねるおいしい鶏です。定番は、きりたんぽ鍋の食材ですが、親子丼や焼き鳥などさまざまな調理に活用できます。また、キノコはマイタケが一般的ですが、シメジ、ギンダケ、サモダシなど旬のキノコでも結構です。コンニャクは、糸コンニャク、つきコンニャクいずれでも構いません。各家庭でも「きりたんぽ鍋」は「おふくろの味」として自由に作られ、好みによって鶏モツを入れたりと、それぞれの家の味、食べ方があります。 |